人気ブログランキング | 話題のタグを見る

長岡

10月になってようやく秋らしい気候になってきました。涼しくて半袖では少し寒いですね。でも、今年はどうも天気がすっきりしなくて…東京は今日もどんよりと日照時間が短いです。やや気分もトーンダウンですね。今日は仕事で長岡です。この地も会社に入ったばかりの若いカメラマン時代にはよく訪れた街です。その頃は新潟の放送局の仕事があって新潟、長岡で何日か過ごしたものです。毎日2現場あったので2人のカメラマンで滞在したので、いろいろと楽しい旅になったものです。当時は新幹線が無いので、上野から特急トキに乗って4時間近い旅でした。上野で冷凍ミカン、ゆで玉子、枝豆を買って道中は缶ビールを飲みながら写真論や芸術論などを語りながらノンビリした旅をしました。(今日は同じトキでも新幹線です。車窓の景色は飛んで行ってしまうからスケッチしようもないですね。代わりにトランベールを読みます。沢木耕太郎さんのコラムがあるのでね〜毎回楽しみにしています。)
長岡_a0271402_08183006.jpg
今はそういう時間の余裕の有る移動は仕事ではなかなか出来ません。ある意味いまのカメラマンたちは可愛そうですね。その頃の僕らは仕事の撮影機材のほか自分のカメラ、時間潰しに使う本や僕の場合はスケッチブックを着替えと一緒に持って行っていたので荷物は多く辛いですが、それらを活用する時間というものが沢山あったのです。電車の車窓から見える景色をスケッチしたりスナップしたり、読書をしたりする時間がありました。今だとスマホ一つですかね?このスケッチを描いた時(1981年とありますね。)は同期で年上のイナハラさんってカメラマンと二人で、まずは新潟の現場をこなし、次は柏崎へ行って仕事を終え長岡に入りました。長岡の仕事は1日空いたので、まるまる1日長岡で代休を取りました。お金を浮かすためにホテルには泊まらず寿屋という駅前旅館に3泊です。薄暗い旅館ですが二人で泊まればかなり安いので浮かせた旅費で、休みの1日を楽しむことにしました。
長岡_a0271402_08183057.jpg
長岡の街を歩いてを観光して、映画を見て、夕ご飯の後は毎日「雨戸」という名のJAZZ喫茶で過ごしました。名盤のJAZZを聴きながらイナハラさんは読書。僕はスケッチしたり読書したり…この頃って会社の仕事用のカメラのほかに自分用のフィルムを入れたカメラを必ず持っていましたが、僕は基本的に自分の写真はネガカラーって撮らないので、時によってですがカラーはリバーサルを入れているので夜は写らないのでスケッチって感じでしたかな?モノクロの時は感度400なので夜も撮りましたが、リバーサルのISO感度は64だったのでね。この時はきっとNikomatに50mm/f1.8だったかな?この後、イナハラさんに感化されてContax 167MTに50mm/f1.8を使うようになったのですが…なので写真が写らない夜の心象風景はスケッチにしていました。もうこの頃から下書き無しで万年筆でフリーハンドを心がけていましたね。色つきはStabiloの水彩色鉛筆です。24色のをわざわざ持って行ってたのですね。今でもそうですが、僕にとって写真もスケッチも文も、その時の自分の気持ちを記録していくという生理的作業なんですね。上手い下手とかでなく、後世にこれを自分で見て、その時の事を鮮明に思い出す事なんです。だから他人から「なんで?」と聞かれると記憶のタイムカプセルとか老後の楽しみと答えるのです。
長岡_a0271402_08183083.jpg
長岡での3泊4日は、朝飯は無し昼は現場の弁当、夜はだいたい王雅和(おがわ)というラーメン屋でした。餃子がすごく美味しかった記憶があります。瓶ビールを飲んで、餃子をつまんでいました。毎日欠かさなかったのがJAZZ喫茶「雨戸」です。ウィスキーか珈琲を飲んで秋の夜長をつぶしました。TVってあんまり見なかったので今より文化的な生活していましたね!(だいたいホテルのTVは有料だったので、普通の放送は1時間100円、2チャンネル=Hな放送は10分100円。)そうそうその頃は家に僕もイナハラさんもテレビ持っていませんでした。TV番組に興味がなくて、ラジオでしたね。動画はもっぱら映画館。そんな文化的な日々を若い頃は送っていましたね〜さて、せっかく若かりし頃の思い出に浸っている今日この頃なんで、長岡は昔よく使っていたターミナルホテルに部屋を取りました。ここは昔はホテル西川って名で、我が社のカメラマン御用達でした。理由は安いことと、このホテルの娘さんが美人だったのでね。娘さん目当てで来ていました。昔の我が社のカメラマンはそんな事を楽しみにしていましたね。そんな懐かしいホテルに今日は泊まります。
長岡_a0271402_08183150.jpg
夕は駅の反対側のニューオータニへ行きロビー営業して、さらに近くの桜亭台町茶寮で宴席です。この店の雰囲気は最高です。明治を思わせる和洋折衷な装飾で、女給さんたちのメイド服もすごくレトロで…あれ?女給さんって差別用語かな?懐石料理で赤ワインです。で、同世代のお客様方と映画音楽の話しで盛り上がりました。会話が楽しいと飲みも進みますね。気がつけばかなり飲み過ぎで…二次会は無理な感じ…最近あまり外飲みしないからめっきり弱くなっています。みなさんの二次会のお誘いをお断りして帰ります。で〜反対側の駅前。お!寿屋健在!
長岡_a0271402_08183116.jpg
この駅前旅館の寿屋ですが、この駅前側とさらに横手に玄関があります。始めてイナハラさんと長岡に来たとき、まずはターミナルホテルで「2人で3泊するけど幾らにして貰える?」と聞き、次はこの寿屋の駅前の玄関から入り同じ質問をします。当時は前もって宿を取るってしてませんでした。現地に着いて各で好きな宿泊先を見つけるって時代で…で、放浪の旅よろしく値段交渉をしたものです。今と時代が違うから交渉次第では安くなったものです。表記の定価で泊まるなんて絶対しませんでした。2人1部屋で連泊なら1泊1000円は安くなったものです。予約していかない方が、その日にキャンセルがあったり、また埋まらない部屋があったりで安くなるのです。万一、どこもいっぱいだと観光案内所で調べてもらったり、ラブホに交渉したり…最悪はステーションホテル(駅まる夜=駅の待合室で寝ること。)って感じでね〜その日は寿屋旅館がとても安く交渉できて、ここにするか?と思ったのだけどイナハラさんが「まだ2軒しか聞いてないから、もう1軒だけ聞いてみよう。」というので、寿屋をKEEPで脇道へ。おや?もう一軒「旅館」ってある。で、入って行く。「すいません!今日泊まりたいのですが…あ!」なんと先ほどの寿屋の主人が出てきました。なんだ〜入り口が2カ所あるんだ。結局、寿屋に泊まることに。
長岡_a0271402_08183997.jpg
部屋に案内される。中庭があってそのまわりをぐるりと廊下がある。なかなか風情のある作りだ。部屋は8畳間だけど、次の間があって布団はそちらに2組ひいてある。TVも一般放送は無料です。なかなか安く泊まれたな。部屋で茶を飲みながらイナハラさんは新潟・長岡のガイドブックを見始める。明日1日中日があるからどこへ行こうかというリサーチだ。どこだかの寺を見学して映画を見るって計画になる。明日は仕事のカメラバックは持たないで行動できるからね〜身軽です。イナハラさん「夕飯はね〜昨日はフレンチだったから、今日は無難に中華が食べたいね。このガイドブックによると王雅和(おがわ)というラーメン屋が人気店らしい。餃子がすごく美味しいそうだ。」という。イナハラさんはお酒をあまり飲まない人で、ビールを付き合う程度なんだ。僕は左利き!飲む方なんでね〜餃子じゃ〜泡盛かな?で、旅館の亭主に「夕飯は王雅和にようと思うのですが、美味しいですかね?」と確認してから行きました。僕はニラレバ定食に餃子、イナハラさんはラーメンライスに餃子です。確かに餃子は凄く美味しかったです。(なんか長岡=餃子っていうデジャブーはこのときからですね。長岡来ると必ず食べてます。)

「○○君。僕はね〜街の文化レベルを計るのはJAZZ喫茶なんだよね。JAZZ喫茶の少ない街は文化レベルが低いと思うんだよ。この街JAZZ喫茶が少ないんだよね〜。」とイナハラさんは言う。イナハラさんは僕と同期入社なんだけど、僕より1週間早く出社したし、年齢は僕より10歳年上の32歳だから先輩って付き合い方にしていた。この方、少し常識が変でね〜ヒッピー的な哲学で熊本から東京へ出てきて写真を始めたんですが、35mmカメラは持って無くてペンタ6×7が今人持ちの唯一のカメラで、それを会社の機材の他に持って来るのだから大変。結局今回からはContax 167MTを買って来ました。ほんと変わり者で、入社時しばらくはロン毛で口ひげで、それじゃあ〜撮影に行かせられないと言われたら、いきなり坊主にしちゃって…夏でもウェスタンブーツを素足に履いているし、ちょっと見ると乞食みたいで…でも話すと知的な方で…「長岡はJAZZ喫茶が2軒しかないのだよね〜雨戸って店がここから近いから行ってみる?」僕「行きましょう!」で、僕はウィスキーのオンザロックを飲む。イナハラさんは珈琲です。(↑上の方のスケッチが2日間そのJAZZ喫茶雨戸で描いた物。どうも雨戸じゃなくて雨扉が正しいようですね。1980年代には閉店したらしいです。)
長岡_a0271402_08183960.jpg
雨戸はもう無いだろうけど王雅和はまだ有るかな?と寂しげな夜の街を歩く。あった!平仮名の店名になってましたが、間違い無く王雅和だ。餃子とビールを頼む。なんか昔と雰囲気は全然変わっていない。みんな飲んでいる客が多い。餃子はやっぱ美味しい。昔食べたレバニラも食べたかったけどお腹いっぱいでね〜我慢・我慢。雨戸はなくなって残念だけど、この王雅和と寿屋が健在で嬉しいです。こういう地盤の店が残っている街はいいですね。そんな昔をまたまた思い出す長岡の夜。

by dancyouteinitijyo | 2016-10-01 08:18 | | Comments(0)


<< 久々に青空! 旅の終わり。 >>